空母いぶき

『空母いぶき』第二巻【抑止力としての核武装】

空母いぶき第二巻

今回の記事では『空母いぶき』第二巻の内容をご紹介すると共に、抑止力としての核武装についても論じます。

中国人民解放軍は、与那国と宮古の自衛隊レーダーサイトをミサイルで破壊すると同時に、パラシュートによる大部隊を与那国島と多良間島に降下させて両島の占領を完了します。

既に「戦争状態」と言っても過言ではない状況となりましたが、未だ「人民解放軍の一部による反乱」である可能性も残される事から、直ちに「防衛出動」の発令には至らず「海上警備行動」が発令されました。

防衛出動に至れども戦争には発展させられない日本

「海上警備行動」とは、海上保安庁では対処が困難な重大、且つ深刻な事案に備える為の措置ではあるものの、自衛隊に警察レベルの武力行使が認められるに留まります。
(画像は海上自衛隊HPより引用)

更に深刻度が高まった場合に発令される「防衛出動」になると、自衛隊の「軍隊」としての実力行使まで認められる事になるので、仮にそれが局地的な紛争であっても、そのまま国家間の「戦争」にまでエスカレートしてしまう恐れがあります。

中国は核保有国であると同時に、多数のミサイルが配備済みであると言われています。
その中には、核ミサイルも含まれていると考えるのが妥当でしょう。

日本の自衛隊がいかに優秀であるとは言え、中国が配備しているミサイルの全てを防ぎきる事は到底不可能であり、しかも専守防衛で手足を縛られた状態である自衛隊は、敵地攻撃能力を持っておらず、日本の都市を攻撃をされたとしても反撃する事ができません。
つまり、敵国が日本にミサイル等を撃ち打ち込もうとする際に、それを躊躇させうる抑止力を、日本は持っていないのです。

従って、もし中国と戦争になってしまったら日本に勝ち目は無いという事ですので「日本の領土と国民は守るが、戦争には発展させない」という非常に困難な課題を背負っての戦いを強いられる事になります。

日米安保は有事に機能するのか?

日本と米国の間には安全保障条約が結ばれており、米軍も日本を守り敵国と戦う義務がありますが、仮に中国が日本に核ミサイルを撃ち込んだ場合、米国が核ミサイルで反撃するか?というと、その可能性は極めて低いと考えざるを得ません。
(画像は海上自衛隊HPより引用)

日米安保条約は、戦争を開始する事に対する抑止力としては極めて有効な存在ではありますが、実際に戦争が始まってしまった場合に、その時々の戦況に対して、どれだけ実際に有効であるかは、誰も確かな事が言えないのが実情であると思われます。

従って、日本が真摯に国防と向き合うなら、核武装も真剣に検討する必要があるでしょう。
核兵器ほど非道な兵器はまたとありませんが、そうであるからこそ、抑止力として絶大な効果が見込めるのです。
抑止力目的のみに限定して核武装する事は、検討の余地があります。

敵国からミサイル攻撃を受けた場合、現状の自衛隊にできる事は、イージス艦やパトリオット等の迎撃ミサイルで撃ち落とす事だけです。

敵国がミサイルを日本に撃ち込んでくれば、その発射された場所まで戦闘機やミサイルが飛んで行って、まだ発射されていない敵ミサイルや、その発射装置等を破壊すれば良さそうなものですが、そうした攻撃は日本が自分に課している「専守防衛」という決まり事から逸脱する恐れがあり、こうした手段について議論するだけでも、強く反対する日本人が多くいます。

しかし、日本に向けて発射されたミサイルを空中で撃ち落とすというのは、誰でも判るように、非常に難易度の高い防衛方法であって、敵のミサイルが少なければまだ有効かも知れませんが、50発、100発と同時に撃ってこられたら、すぐにお手上げになってしまう事は目に見えています。

そんなに同時に多数撃ってこなくても、今までのように弾道予想ルートをなぞるように素直には飛行しない、フェイント動作が可能な機能を備えたミサイルとか、一見すると一発のミサイルのように見えても、実は途中で複数の小型ミサイルに分裂して、それぞれが別々の標的を狙うようなミサイルとか、そうしたミサイルが既に実用化の段階に入っているという話しも有りますので、従来の「迎撃」を唯一の選択肢として議論していると、その議論そのものが既に完全に時代遅れになっていまっている可能性があります。

敵基地攻撃だけでも凄いアレルギー反応を示す日本人が少なくないのに、「核武装」なんて議論は日本で出来そうもありません。
でも、先の大戦で日本が核爆弾を投下されて以来、核を保有する国の数も、核弾頭の数も、当時とは比較にならないほど増加したにも関わらず、まだ一発も使用されていません。小さな戦争なら、殆ど休みなく、世界のあちこちで起こっているにもかかわらずです。
それに「日本が核爆弾を投下されて以来」と書きましたが、もし当時の日本が核保有国であったとしたら、むざむざ核爆弾を落とされる事も無かったはずなのです。有史以来、核保有国が核攻撃された事は、一度もありません。

勿論、今後も未来永劫、核爆弾が使用されないという保証などありません。
偶発的な理由か何かで、誤って発射された、たった一発の核ミサイルのせいで、連鎖反応的に核戦争が拡大していき、遂には人類が滅んでしまう可能性だってあり得ます。
だから、世界が核廃絶に足並みそろえて取り組むのであれば、それに越した事は無いのですが、今のところは夢のまた夢という他ありません。

核を持っている国がある以上、自分もまた核を持つ事を考える必要があります。
その核を実際に使う時の事を考えるから、核保有を躊躇してしまいますが、他国が自国に核を撃ち込む事を躊躇させる為の「究極のお守り」だと思えば、そんなに核アレルギーになる必要は無いのではないでしょうか?

「自分からは絶対に撃たない。でも撃たれたら必ず打ち返す。だから、決して日本には手を出すな。」

それでいいじゃないですか?
これぞ専守防衛です。
勿論お金はかかりますが、効力に不安のある「迎撃」に絞って議論しているよりは、よほど意味があると思います。

70年以上もの間、憲法を一字一句も変える事すらできない日本にとって、核武装など夢にも有り得ない事のようではありますが、まずは憲法を改正し、先の大戦における日本の本当の姿、役割を国民の大多数が理解する(あたりまえの)時代が来れば、核武装の合理的な認識も可能になるというか、むしろ自然な流れとなっていくであろうと思われます。

遂に空母いぶきが急遽先島諸島海域に向かう

閑話休題。

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その頃、空母いぶきを旗艦とする第5護衛隊群は、演習の為に南鳥島沖にありましたが、横須賀基地より中国軍の侵略行為の第一報が入り、急遽先島諸島海域に向かう事になりました。
(画像は海上自衛隊HPより引用)

先島諸島海域までは約3000Kmもあり、途中で給油が必要となる為、給油ポイントを南大東島と定め、これを目指す事となります。
と、第5護衛隊群の前方に2艦の中国の潜水艦が待ち構えている事を、自衛隊の対潜哨戒ヘリが探知します。

そのまま第5護衛隊群が前進を続ければ、中国潜水艦の魚雷射程距離内に入ってしまいます。
しかも、中国潜水艦はミサイル発射管の外扉を開け、注水を開始します。
それを探知した自衛隊潜水艦も、ミサイル発射管の外扉を開け注水を開始、まさに一触即発の事態です。

この部分は、第二巻の第11ソーティと第12ソーティで描かれています。
私がこの部分を最初に読んだ時は、スーっと読み流してしまい、意味がよく判りませんでした。
というか、その後何度読んでも、中国の潜水艦艦長の本音を確実に読み取る事はできていません。
とはいえ、「海上警備行動」発令で様子見状態だった日本が、本気で軍事力を行使してでも領土奪還に突き進んでいくきっかけとなった重要な部分ですので、あなたも最低3回は読み込んで、中国軍潜水艦艦長の思惑を推定してから、先に進んで下さい。

ソーティ (Sortie)とは、後方の拠点から航空機や艦艇、もしくは部隊といった単一の軍事ユニットを展開または派遣する事を意味する軍事用語である。
出撃する航空機や艦艇、部隊は単独か複数かにかかわらず、特定の任務を帯びているのが普通である。(出典:Wikipedia)
『空母いぶき』では、「」の代わりにソーティが使われている。

その後、自衛隊偵察機が多良間島上空で中国軍戦闘機に撃墜された事を受け、遂に日本初となる「防衛出動」が発令されます。
中国軍の空母「広東(カントン)」も姿を現し、日中激突目前の戦況に入っていきます。

「このアジアの海で軍事侵略が、いかに傲慢で無謀で愚かな事か、力でしかわからぬのなら力で知らしめる。防衛出動とは、その力の事だ。」
(出典:『空母いぶき』第二巻、秋津竜太)

第三巻をお楽しみに。

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