空母いぶき

『空母いぶき』第四巻【専守防衛の意味とは?】

空母いぶき第四巻

『空母いぶき』第四巻の最初のバトルでは、海自の潜水艦「せとしお」と「けんりゅう」の二艦が、それぞれ神業レベルの操艦技術で難局を突破します。

海自の訓練の賜物である高い技術だからこそなせる(わざ)なのか、漫画だから描ける業なのか、軍事技術の知識が限定されている私には判断がつきませんが、読んでいて抜群に面白い事だけは確かです。

単にミサイルや魚雷を敵に打ち込むのではなく、操艦や武器の操縦技術で敵に対する優位を形成しつつ、敵味方の被害を最小限に保つ事で、中国が全面戦争に突入してくる口実を与えない、非常に高等、且つ、繊細な作戦行動が展開されていきます。

(画像は海上自衛隊HPより引用)

新波副長も驚く、秋津艦長の深謀遠慮とは?

新波副長は、秋津艦長が敵潜水艦に逃げ道を与えたのは、「せとしお」と「けんりゅう」の二艦の被害を最小限に保って戦争を回避しようとした頑張りに影響されて、撃沈できるのをあえて控えて、威嚇して追い払うだけに留めたものと思っていましたが、秋津艦長は、日本の神業レベルの戦闘技能を目撃した潜水艦に生還する機会を与え、中国軍に報告させる事で、中国軍全体が日本の神レベルの技能の高さに対して畏怖の念を抱くようになる効果を見込み、自ずと中国に対する日本の精神的優位を築く事で、その後の戦闘を有利に進めようと考えていた事を吐露します。

「なるほど、あんたは私より一枚上手だ!」

と、新波副長が思ったかどうかの描写は、残念ながらありません。

交戦中の敵潜水艦に対して、折角の撃沈のチャンスをあえて「威嚇」に留めて逃げる余地を与えた秋津艦長の判断に対し、

なぜ一気に殲滅しないのですか? 向こうはすでにわが国土を不法に占領している明白な敵ですよ。
(出典:『空母いぶき』第四巻 下士官からの怒りの質問)

との疑問の声も飛び出しますが、これに対し、

互いに宣戦布告している訳ではない。戦闘はやっても、戦争は回避せねばならんのだ。戦争への口実を与えるような攻撃は、断じてしてはならぬ。
(出典:『空母いぶき』第四巻 新波副長の返答)

と答えています。
侵略に対しては、徹底抗戦する。
しかし、戦闘はしても戦争にはさせない、戦争への口実を与えるような攻撃は断じてできないとは、なんと複雑怪奇なミッションを自衛隊は背負わされているのでしょうか?

そもそも現行憲法の元での軍事衝突は矛盾でしかない

口ではまともな事を言っている「(てい)」ではありますが、戦争にはさせない戦闘って、結局は威嚇のように、交戦のようでいて交戦でない事しかできない事を意味してますよね?
矛盾に満ちていますが、仮に中国と自衛隊が戦闘状態に入る事があるとすれば、自衛隊はきっとこうした矛盾に苦しまなければならない事態に巻き込まれていくと思います。

そんな事にならない為にも、自衛隊の手足を縛る事しか書いていない日本国憲法を、本来のあるべき憲法に変える必要があると思います。

さて、北京での二度目の外交交渉も、何んらの進展も無いまま決裂し、政府は多良間・与那国両島、及び尖閣諸島の武力奪還を決定します。

そこで、第5護衛隊群と第九十二飛行団には

「先島諸島空域の航空優勢を確保せよ」

との命令が下されます。

この命令に対し、秋津艦長が立てた作戦は、まず敵航空機網の「目」である早期警戒管制機「空警500」の撃墜です。(画像は航空自衛隊HPより引用)
空警500の乗員は14名。

「専守防衛(≒撃たれるまで撃つな)

をパブロフの犬のごとく頭にすり込まれてきた空自パイロットには、(撃って来ない)空警500の撃墜命令には、相当な抵抗感がある様子です。
しかし秋津艦長は、日本が既に国土防衛の為に武力奪還を選択した以上は、敵の目を破壊する事も防衛の一環であるとの確信の下、

「ここで負ければ、日本が負ける」

という事を撃墜命令の根拠に据えます。

現行憲法下では秋津艦長は刑事犯で裁かれかねない?

私には非常に自然な論理の展開に思えますが、いざ本番の「防衛出動」が出た場合に、現場でこうした判断ができるものかどうか、現職の自衛隊幹部クラスにインタビューでもしてみない事には、判断ができません。

そもそも「専守防衛」とは、どんな意味なのでしょうか?
例えば、ピストルの銃口を向けられたとしても、相手が実際に弾を撃ってくるまで、自分から先に攻撃するのを控える事を言うのでしょうか?
確かにそういう解釈も有り得ますが、日本が国家として「専守防衛」の意味を考える場合には、

「外国を侵略したり、攻め込んだりという事は決してせず、ただ日本の領土が侵犯されたり、日本国民が危害を加えられそうになった場合には、防衛としての攻撃を行う権利は有る」

という意味で理解すべきと考えます。

『空母いぶき』の物語の中では、日本国民の多数が人質として敵軍に拘束され、これらの命と引き換えに日本固有の領土である尖閣諸島の領有権の放棄を迫られているのですから、この脅迫に屈しないというのが政府の結論である以上は、「撃たれるまで、撃たない」という意味の「専守防衛」ではなく、既に「侵略」という国際法違反の武力侵攻をしてきている敵国に対して、国際法に違反しない範囲での武力による反撃は「防衛の為の正当な行為」として認められる、という解釈が妥当と考えます。

遂に空警500の撃墜に成功し、味方機が全て無傷のまま、敵戦闘機を5機も撃墜できた事で、先島諸島空域の航空優勢の確保に成功しますが、空母「広東」から、続々と艦載機が発艦しているとの情報が入り、再び空母いぶきの司令室は緊張に包まれます。

相手は一体何機の戦闘機を上げてくるつもりなのか?
第五巻をお楽しみに。