空母いぶき

『空母いぶき』第八巻【憲法9条の元での防衛出動とは?】

空母いぶき第八巻

『空母いぶき』第八巻では、自衛隊が遂に一線を超えた攻撃に出ます。
もしも実戦となった場合に、本当にこんな攻撃が可能なのか、とっても心配です。

護衛艦「あたご」が尖閣諸島における中国のミサイル基地等の施設を次々と砲撃で破壊している間、海底では中国と日本のそれぞれ3艦づつの潜水艦による壮絶なミサイルの攻防が続きました。

第七巻の情報によると、「あたご」が艦砲射撃をしている間、尖閣諸島の上空には12機の殲20がF35迎撃の為にいたはずです。
しかしF35は現れず、「あたご」は次々と中国が尖閣に配置した基地施設を砲撃し、破壊し続けていきます。
海中からは潜水艦による「あたご」への攻撃はあったものの、全て封じられ、返り討ちにされてしまいます。
そして結局、「あたご」のやりたい放題の攻撃で、尖閣の基地はほぼ全滅します。

空にいたはずの殲20は、一体何をしていたのでしょうか?
対空ミサイルしか積んでいないとしても、ただ手をこまねいているだけというのは、不自然過ぎます。
少なくとも8日以上かけて基地化を進めていた中国軍は、基地から何か抵抗は出来なかったのでしょうか?
日本から24時間も前に砲撃の予告を受けながら、ほぼ何も抵抗できないままやられっぱなしの中国軍って・・・?
この部分は、あまりに中国軍が弱すぎてリアリティを欠いていると思います。

敵潜水艦を撃沈、って大丈夫なの?

「あたご」をサポートする役目の護衛艦「せきどり」は、自らの艦を盾として「あたご」へのミサイル攻撃を防ぎます。
中国軍も、潜水艦「遠征103号」が潜水艦「けんりゅう」からミサイル2発を撃ち込まれ大破、沈没します。
尖閣諸島においても、数は未確認ながら、多くの中国人兵士の被害者が出たに違いありません。

近くで偵察していた米国原潜も、「遠征103号」の撃沈を見て、

「非戦を国是とする日本が、この結果に耐えられるのか?」
(出典:『空母いぶき』第八巻、米国原潜乗員の言葉より)

と、心配してくれるくらいです。

「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」と明記してある日本国憲法を、戦後70年以上も一字一句修正できなかった日本が、「防衛出動」が出ただけで、これだけの軍事力行使ができるものかどうか、簡単には信じられない気持ちもありますが、中国軍の身勝手な侵略行為に毅然として立ち向かう事に対しては、私は支持致します。

国連でも、この紛争について中国と日本が、互いに相手国を非難し合いますが、両国の議論は平行線をたどります。
中国が「釣魚島は、古代より中国の領土である」という主張に対して、歴史的・科学的に厳正に検証し正しく判定できる何らかの世界的且つ中立的な機関が絶対に必要と考えます。

国連での日中双方の議論は平行線を辿りますが、英国代表の「心の声」が、尖閣の基地攻撃を総括してくれています。

中国は日本自衛隊がそこまで踏み切るとは、予想していなかったに違いない。
(中略)
自衛隊は中国の尖閣諸島実行支配が不可能であることを証明したのだ。
(中略)
この砲撃で中国側は尖閣領有の打つ手を失ったのだ。
(中略)
中国は確実に、追いつめられた。

(出典:『空母いぶき』第八巻、国連英国代表の心の声より)

あくまでも、英国代表一人だけの心の声ではありますが、日本との同盟国である米国でもなく、中国寄りの立場を取るロシアでもなく、中立的な立場にある英国代表の思いとして描かれているところに、作者の代弁者としての役割が与えられているように感じました。

ただ幸いな事に、この物語が連載されていた当時のアメリカは「領土問題には介入しない」事を基本的スタンスとしていましたが、2018年10月にペンス副大統領が、それまでの米国の対中戦略の誤りを認め、敢然と中国に立ち向かっていく姿勢を明確にした歴史的演説を行いました。

それは口先だけで終わらず、数々の具体的な行動によって実行され続けています。

中国は北海艦隊単独の行動とし増援は行わない方針

北京では尖閣における自衛隊との紛争について会議が行われますが、作戦の主体は中国の北海艦隊単独であり、他からの増援は行わない事が確認されます。

その後自衛隊は、尖閣諸島への上陸に向けて準備を続けますが、中国軍が尖閣に留まっている間は手が出しにくく、中国軍が尖閣から引くのか、再度基地化に取り掛かるのか、出方を伺っていました。

と、そこに中国本土の港で、中国軍の輸送船に対空・対艦ミサイル発射器を積載しているとの情報が入ります。
しかも、輸送船には病院船を伴走させて、人道の盾として利用しようとしている事も判ります。

潜水艦「遠征103号」を撃沈し、しばらく沈黙していた潜水艦「けんりゅう」が突如浮上し、滝艦長が洋上から無線で空母「いぶき」の秋津艦長に、病院船と並走している輸送船への攻撃を進言してきます。
(画像は海上自衛隊HPより引用)
病院船にはかすりもせず、確実に輸送船を撃沈できるのは「けんりゅう」をおいて、他に無いとの主張です。

これに対して秋津艦長は、「けんりゅう」の任務は引き続き第5護衛隊群の護衛である事を伝えると同時に、先の尖閣基地化阻止攻撃における「けんりゅう」の奮戦に、間接的ながら感謝の意を表します。

(P.194の秋津艦長の「貴艦の奪戦」は「貴艦の奮戦」の誤字と思われます。)

精神的葛藤のはけ口を無意識に探していた滝艦長の魂は安らぎ、心機一転して本来の職務に戻っていくのでした。

第九巻をお楽しみに。