空母いぶき

『空母いぶき』第十二巻【超音速・対艦ミサイルによる恫喝】

空母いぶき第十二巻

今回は『空母いぶき』第十二巻の内容をご紹介します。

米国第7艦隊が東シナ海に向けて北上しつつある中、中国は空母「広東」が負ければ空母キラーの異名を持つ超音速・対艦ミサイル東風21Dの発射の可能性を示唆して、日本側の混乱を狙ってきます。

東風21Dは実戦で使用された事がないのですから、イージス艦等から発射される迎撃ミサイルに対して、超音速だけでなく、何か新しい回避システムを備えている可能性も否定はできず、空母いぶきにとっても、大きな脅威である事は間違いありません。

2020年8月、中国による南沙諸島の基地化を非難する為に「航行の自由作戦」を続けている米国海軍を威嚇する為、中国は東風21D計2発を含む4発の弾道ミサイルを、西沙諸島北部に打ち込みました。
しかしその翌日には、米国の駆逐艦が、中国が領海と主張する西沙諸島に堂々と侵入し、中国の警告には決して屈しない姿勢を明確にしています。
まさに「一触即発」の緊張状態が続く米中のにらみ合いですが、このまま米軍がフェードアウトしてしまう事は避けて頂きたいところです。

東風21Dミサイルの情報は空母いぶきのブリッジにも届き、隊員の間に不安が広がります。
先の見えない戦闘に、新波副長から空母艦長同士の通信による講和の案も出されますが、それは秋津艦長に瞬時に却下され、いぶき、広東共に、艦載機を一旦全機帰艦させ、最終決戦の準備に入ります。

秋津艦長の深い読みの作戦に隊員も納得!

艦載機を迎撃隊と攻撃隊に分けるのは同じですが、日本のF35JBには軽い空対空ミサイルのみを搭載し、空戦をかいくぐった後に、広東の甲板各所に空対空ミサイルを撃ち込んで、艦載機の発着艦を不能とし、広東の空母機能を喪失させるのが最終目標です。

対艦ミサイルではなく、対空ミサイルのみと知らされ、F35のパイロットから、

ここに至ってなお、敵の戦闘力のみを無力化するなどと、きれいごとの戦闘をやれと言うのですか?
(出典:『空母いぶき』第十二巻、池谷三佐、スパロウ小隊隊長)

との不満も出ますが、数で劣るF35の編隊が殲20と激しい空中戦に突入する事が確実と予想される以上、重い対艦ミサイルを積んだ状態では空中戦が戦えない事を考えれば、対空ミサイルのみの武装は、十分に合理的である事が理解され、第92航空団と秋津艦長の心は一つにまとまります。

一方の空母広東の艦載機は、迎撃隊と攻撃隊とに分かれて戦う以外に、別動隊6機が2隊に分かれ、超低空飛行でレーダー網をかいくぐって空母いぶきに接近し、F35JBの11機と、殲20が29機とで大混戦となっている最中の混乱に乗じて、空母いぶきに絞って魚雷による飽和攻撃を仕掛け、確実に撃沈する作戦です。

そして遂に熾烈な空中戦が開始されます。

3倍以上の全35機で向かってくる殲20の編隊に対し、いぶきから発艦したF35は11機しかありません。
数では3倍以上の敵機数となりますが、個々の戦闘機の能力、パイロットの技量、自国を守るという気力まで考慮すれば、日本側が必ずしも劣性とは言えず、激戦必至です。

別働隊に気づく秋津艦長の勝負勘

予想通り大混戦となった時、秋津艦長の鋭い勘が働き、中国軍に別動隊が存在する可能性に気づきます。

直ちに、あまぎりちょうかいゆうぎりあたごの4護衛艦に対して、超低空からの別動隊による攻撃に十分備えるよう指示します。

秋津艦長の勘は的中し、哨戒ヘリが艦隊後方に二隊に分かれて接近してくる敵6機を発見します。

しかも敵はミサイルではなく魚雷を、艦隊の前後から時間差で仕掛けてきます。
対艦ミサイルであれば、発射直前には戦闘機の高度を上げる必要があり、護衛艦側からはそのタイミングを狙い撃ちする事ができますが、魚雷であれば、低空飛行を維持したまま発射する事が可能であり、この点でも殲20には有利と言えます。
はたして、あまぎりちょうかいゆうぎりあたごの4護衛艦は、多数の魚雷から空母いぶきを守りきる事ができるのでしょうか?

第十三巻(終)をお楽しみに。