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核兵器禁止条約が発効!被爆国の日本が批准を拒否するのはなぜ?

大陸のパズル

核兵器禁止条約が2021年1月22日に発効しました。
核兵器の無い世界へと人類が向かう最初の一歩との事です。

しかし、世界で唯一の被爆国である日本が先陣を切って批准するかと思いきや、

「不参加」

を決めています。
なぜ日本は、参加しないのか?

そもそも、核兵器禁止条約とはどんな条約で、どんな意味や問題があるのか等について解説します。

核兵器禁止条約とはいかなる条約なのか?

核兵器禁止条約とは、核兵器を法的に禁止する国際条約で、1996年に起草され、2017年に採択、2020年に発効の為に必要な50ヶ国の批准が得られた事から、2021年1月に発効となりました。
この条約に批准した国で禁止される項目は、

7つの禁止項目
  • 開発
  • 実験
  • 生産・製造
  • 貯蔵・備蓄
  • 移譲・受領・取得
  • 使用
  • 威嚇として使用

の7項目にわたり、実質的に核兵器との関わり一切を禁じるものとなっています。
この条約は締結国のみに義務が発生し、非締結国への法的な拘束力は無い為、核兵器全廃に向けた人類初の国際条約としての意義は多少は有るとしても、最終目的である核兵器の廃絶に至る道筋は、条約が発効した現在においても、全く見えていないというのが実情です。

核兵器の他にも、生物兵器、化学兵器、クラスター弾、対人地雷等も、非人道的な武器として禁止条約が発効してきました。 ただ、こうした条約を率先して守ろうとする国もあれば、意に介さない国もある点で、国際条約の意味自体が問われています。

核兵器禁止条約の意味や問題点とは?

この条約が持つ意味は、 核兵器の国際的な禁止条約が発効し、批准した国が50ヶ国を超えたという事実にしか無いのかも知れません。

この国際条約に批准する国が増えていけば、核兵器が非人道的で違法な兵器であるとの認識が広まり、核兵器を保有する、又は、新たに保有しようとする国に対しての圧力になり得る、との見方がある事は事実です。

更には、この条約に批准している国に、核保有国が核兵器を撃ち込めば、攻撃した側の国が国際的に非難され、孤立する可能性が高まると推測され、結果として核兵器の使用が抑制される事に期待できるとも考えられます。

しかし、それらの「効果」が如何程の役に立つものなのかは全く不透明であり、国民の命を賭けてまで期待して良いものではありません。
とりあえず核兵器を持つ意思や理由や可能性の薄い国に限って批准している、というのが正直なところでしょう。

なぜなら、米・中・露・英・仏・印・パキスタン・北朝鮮等の核保有国は勿論、核抑止力に依存しているNATO=北大西洋条約機構の加盟国(ドイタリア、カナダ、ベルギー、オランダ等をはじめとする全30ヶ国※米・英・仏を除けば27ヶ国)や、日本、韓国等からは、禁止条約への参加国が一つも無いからです。

原子力発電等とは異なり、莫大な維持費のみが延々と発生し続ける核兵器を、何十年も保持し続けているからには、それだけの理由があるからであり、おいそれと放棄できる代物ではないという事です。

核兵器の平和的側面=核の抑止力

核兵器の非人道的な面ばかりが強調されますが、核が持つ戦争抑止力の効果は抜群です。
1945年から1989年まで、40年以上も米国とソ連の冷戦が続きましたが、朝鮮戦争やベトナム戦争のように東西両陣営の代理戦争的なものはありましたが、米国とソ連が直接交戦に至る事はありませんでした。(だからこそ冷戦と呼ばれる。)

それは両陣営が核兵器を保持していて、一旦交戦を開始してしまうと、それがいつ核戦争に発展してしまうかわからず、米ソ共に滅んでしまう可能性を否定できないからでした。
最初期型の広島に投下された原爆でさえ10万人以上の死者を出しているのですから、その後、遥かに性能を増した核兵器を数千発とは言わず、たった数発を撃ち合うだけでも、双方が受けるであろう壊滅的な被害は、いかなる戦争の目的や動機をも凌駕してしまうのです。

誠に残念な事に、世界で最初に核攻撃を受けてしまった日本ですが、もし当時の日本が核保有国であれば、米国も核の使用を思い留まったであろうと推測されています。

日本が核を保持していないという確信があったからこそ、米国は全く使う必要のない核爆弾を実験目的で使用したのです。 (しかも米国は、タイプの違う原爆を2種類用意して、民間人が密集して暮らしている都市(広島と長崎)を狙って爆発させ、その後年単位で現地の人々の被害を詳細に研究しているのです。人体実験を目的とした民間人大量虐殺であり、明らかな国際法違反です。)

核兵器禁止条約で核の廃絶は可能か?

核兵器を保有する全ての国と、核の傘を自国防衛の柱にしている国の全てが、核兵器禁止条約に参加しないのは、核兵器による抑止力を自国のみが失い、核兵器を保有する他国が存在し続けるという事態を受け入れる訳にはいかないからです。

この問題を解決する為には、地球に存在する核兵器が同時に全て無効化されるような、全く新しい計画やルールが発明される必要がありますが、まだ誰もそのヒントすら思いついていません。

従って、核兵器禁止条約に批准する国が今後ある程度増える事はあっても、核廃絶に至る可能性はゼロと言っても過言ではありません。
つまり核兵器禁止条約には、その本来の目的を達成できる可能性は無く、これについて人々が集まっていくら議論を重ねたところで、

「核なき世界に向けて、私は活動している!」

という自己満足を得る事以外には意味が無いと考えます。

被爆国の日本が批准を拒否するのはなぜ?

「日本は世界唯一の被爆国であるから、一刻も早く核兵器禁止条約に署名・批准すべきである」との無数の声が、日本各地と各種の団体から上がっています。

しかし既に書いた通り、核兵器を持たない国がいくら核兵器禁止条約を批准したところで、核兵器を保有する国々の意識を変える効果が全く見込めない以上、むやみに日本も批准すべきであると訴える事は、核の抑止力を失う方向へ日本を引っぱっていく効果しかなく、極めて無責任な言動であると考えます。

唯一の被爆国=>核廃絶運動の先頭に立つべき=>禁止条約に批准すべき

のロジックは、物事をまともに考えない、短絡的な思考の産物と言えます。
これは、自国をどう防衛するかについて一切述べず、国防軍を持つ事を完全否定している日本国憲法を「守らねばならない」と主張する人々と共通する無責任です。

元々核を持たない日本が、核廃絶を宣言したところで、それがなぜ核廃絶の後押しになるのか、しっかりした根拠を示せるものなら示してほしいものです。

核廃絶には国連の解体と再構築が必要である

この地球上から核兵器を無くす為には、全ての国が(同時に)核兵器を必要としなくなる状態になる必要があります。
しかし、国家間の問題解決の手段として戦争が事実上合法になっている現在では、そのような状態は全くの夢物語に等しいと言えるでしょう。

なぜなら、戦争が合法であるならば、より強力な兵器を大量に保持する事が国家の優位性に繋がり、最強の兵器とは核に他ならないからです。

このような状態が戦後70年以上も続いてしまっている原因は、その責任を追うべき国連が、その役割を全く果たせていない事にあります。

国連安全保障理事会の常任理事国5ヶ国全てが核保有国なのですから、核廃絶を実現する為には、まず国連を解体する必要がある事は明らかですが、ではどのようにして新たな国際的機構を作れば良いかという議論は、まだ殆ど始まってすらいない段階にあると言わざるを得ません。

まとめ

核兵器禁止条約を、核廃絶という最終目的地に至る為の試金石であるかのように期待するのは、全くの虚構と言わざるを得ません。
なぜならこの条約には、批准した国が核兵器を保持しない事を約束する程度の意味しか無く、核保有国が核兵器を放棄するという最も大切な目的に対しては、何の効果も期待出来ないからです。

核兵器を保持する国に対して、核兵器を放棄させる何らの効力も持たない以上、核兵器禁止条約は言葉遊び程度のものでしかありません。

現実問題として、人道を無視する独裁主義国家や領土的野心をむき出しにする国家が実在し、しかも核兵器を保持している以上、そうした国からの核攻撃を未然に防ぐ為に、核の抑止力を保持し続ける事は、むしろ悲惨な戦争を回避する為の平和的な選択であり、一部の言葉遊びを好む人々の短絡的な思考の影響を受けるべきではないと結論致します。